著作物の「作詞家・作曲家に関する権利」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。
作詞家・作曲家の権利
作詞家も作曲家は、著作権法を利活用して、著作権ビジネスを展開しているプレーヤーの代表格だと思います。
作詞家や作曲家が創作する著作物は、著作権法10条1項2号の「音楽の著作物」に含まれます。
歌詞については、詩や短歌などのように音とは結びつかないで利用されることもありますが、楽曲と同時に利用される性質を持っていますので、「音楽の著作物」とされています。
作詞家であれば、歌詞を書き上げた時点で、当該歌詞について著作権、著作者人格権が発生します。
作曲家の場合も、曲を書き上げた時点で、当該楽曲について著作権、著作者人格権が発生します。
編曲家の権利
音楽ビジネスにおいては、編曲家が大きく関与することもあります。
しかし、編曲にもいろいろなパターンがあると思いますので、すべての編曲に関して、著作権が発生するとは限りません。
音楽の著作物に関しても、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)という創作性の要件が必要です。ゼロから書き上げた曲について、作曲家に著作権が発生するのは当然ですが、別の作曲家が書き上げた楽曲を手直ししたり、アレンジしたことが、「創作した」といえるかの判断により、編曲家の権利の有無が異なります。
著作権法2条1項11号では、二次的著作物を「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。」と定義しています。
編曲した部分に関し、創作性が認められるか否かという判断は大変難しい判断となりますが、仮に編曲部分に創作性が認められるような場合は、完成した楽曲は二次的著作物ということになり、編曲家が二次的著作物に関する権利を有することになります。ただし、著作権法28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定していますので、原著作物(楽曲)の著作者である作曲家も編曲の利用に関して、二次的著作物の著作者(編曲家)と同一の権利を専有することとされています。
このように、編曲家に二次的著作物に関する権利行使の可能性があり、楽曲の利用について個々に許諾を得なくてはならないという煩雑な事態が生じることから、実務上は、契約書等により、編曲家の権利は音楽出版社等に譲渡される形になっていることが多く、編曲家の権利が裁判等で争われることは少ないと言えます。
ただし、契約書を作成しないで編曲を依頼したような場合には、著作権のほか、著作者人格権の侵害も問題となりますので、注意が必要です。
作詞家・作曲家の著作権の管理
作詞家や作曲家は、日々創作活動に邁進しているので、自分の著作権の管理や著作権使用料の徴収、著作権侵害に対する対応を個人で行うことは困難です。そこで、多くの作詞家や作曲家は、JASRACやNexToneなどの著作権等管理事業者に著作権の管理を委託しています。JASRACは、著作者権者から一定の費用を受け取ることで、著作権者のために著作権の管理や著作権使用料の徴収、著作権侵害に対する対応を行っています。