著作物性 著作物性プログラム著作者知財高裁 プログラムの著作権侵害は「著作物の特定」から――ニタコンサルタント株式会社に対する2800万円の請求が棄却された斜面安定解析プログラム事件(知的財産高等裁判所令和8年(2026年)7月22日判決・令和8年(ネ)第10014号) 2026年8月8日 はじめに 研究室や共同研究の現場で作られたプログラムが、企業の業務システムに組み込まれていく――理工系では珍しくない流れです。ところが十数年後に「あの中核は自分が書いた」「無断で改変された」と主張しようとすると、思わぬ壁にぶつかります。自分が書いたはずのプログラムが、いま手元に1行も残っていないという壁です。 本稿で取... 大熊 裕司
美術の著作物 翻案二次的著作物翻案権依拠性 「紋次郎いか」控訴審判決を読む――キャラクターの“デフォルメ”が翻案権侵害とされた理由と著作権法28条の射程(知財高判令和7年9月24日) 2026年7月20日 時代小説『木枯し紋次郎』の主人公をかたどった図柄を、半世紀にわたり駄菓子「紋次郎いか」の容器に使い続けてきた――。この図柄をめぐる著作権侵害訴訟で、知的財産高等裁判所は令和7年(2025年)9月24日、請求を棄却した一審判決を覆し、メーカーに約5,600万円の支払いと商品の製造販売の差止めを命じました。 「キャラクター... 大熊 裕司
著作物性 最高裁判決意匠法デザイナー知財 「TRIPP TRAPP」最高裁判決──量産実用品の著作物性に最高裁が初めて明確な基準を示した意義 2026年5月12日 ノルウェー発の子ども用椅子「TRIPP TRAPP(トリップ・トラップ)」は、長年にわたり高いデザイン性をもつ製品として知られてきました。本件で争われたのは、この椅子の形状そのものが著作権法上の「著作物」に当たるのか、そして競合製品の製造販売が著作権侵害や不正競争に当たるのか、という点です。量産され、日常生活の中で実用... 大熊 裕司
建築の著作物 設計図建築マンション マンションの設計図は著作物か──メゾンA事件に見る「建築の著作物」と「図面の著作物」の交錯 2026年4月19日 1. 「設計図を真似された」と訴えるとき、何が問題になるのか あるマンションを設計した建築士が、自分の図面を他社に流用されたと考えたとき、まず頭に浮かぶのは「著作権侵害で損害賠償を請求できないか」という発想でしょう。 ところが、この発想はすぐに二つの壁に突き当たります。第一に、建築物そのものを「建築の著作物」として保護... 大熊 裕司
建築の著作物 建築建売住宅住宅デザイン 建売住宅は「建築の著作物」か――グルニエ・ダイン事件が引いた著作物性の高いハードル 2026年4月19日 はじめに――「このマイホーム、著作物として守れますか?」 住宅メーカーの法務担当者から、こんな相談が持ち込まれることがあります。 「競合他社が、うちの看板商品の外観デザインにそっくりな住宅を展示場に建てた。意匠権はとっていない。でも、グッドデザイン賞も受賞した当社自慢の住宅だ。著作権法で差し止められないだろうか?」 直... 大熊 裕司
著作物性 プログラムソースコード電車線設計 電車線設計用プログラム事件――ソースコードの「ありふれた表現」はどこまで保護されないのか 2026年4月19日 東京地判平成15年1月31日・平成13年(ワ)第17306号(著作権侵害差止等請求事件・判時1820号127頁) 判決文(裁判所ウェブサイト) 1. はじめに――「同業他社のCADマクロが自社製品とそっくり」は著作権で止められるか SI・CADベンダーの実務家であれば、一度は次のような相談を受けたことがあるのではないで... 大熊 裕司
著作物性 データベース不法行為翼システム 「翼システム事件」──データベースに著作物性は認められるか、そして著作権がなくても不法行為で保護される場面とは(東京地判平成13年5月25日中間判決) 2026年4月20日 1. はじめに ある企業が、多大な費用と労力を投じて、自動車の車種・型式・諸元をまとめた業界向けデータベースを構築しました。ところが、ライバル企業がそのデータをほぼそのままコピーして、より安い価格で販売し始めてしまいました。著作権法は、このような「情報の塊」を保護してくれるのでしょうか。 著作権法は平成元年(1986年... 大熊 裕司
著作物性 創作性アイディア・表現二分論マージャー理論学問的定義 言葉の定義やフレーズに著作権はある?城の定義事件(東京地判平成6年4月25日)をわかりやすく解説 2026年7月28日 【この記事の3行まとめ】 短い「定義文」は、長年の研究成果でも著作権で保護されにくい――それを正面から判断したのが城の定義事件(東京地判平成6年4月25日)です 著作権が守るのは「アイディア(考え・学説・事実)」ではなく「創作的な表現」だけです(アイディア・表現二分論) 表現方法が一つしかない・きわめて限られる場合は、... 大熊 裕司
著作物性 創作性発信者情報開示事実の叙述傍聴記 「傍聴メモ」に著作権は発生するか――ライブドア裁判傍聴記事件が示した事実と創作性の境界 2026年7月28日 はじめに――その「傍聴記」、誰のものか あなたが注目の刑事裁判を傍聴し、法廷で見聞きした証人尋問の内容を自分のブログに丁寧にまとめたとします。しばらくして、自分が書いた文章と極めてよく似た記事が、他人のブログにコピーされているのを見つけました。「著作権侵害だ。プロバイダに発信者情報を開示させ、削除させよう」と考えるのは... 大熊 裕司
美術の著作物 創作性二次的著作物模写浮世絵 「模写」に著作権は生まれるのか――豆腐屋事件が示した二次的著作物の創作性ライン 2026年7月28日 はじめに――江戸の浮世絵を「写した」絵は、誰のもの? 江戸時代の風俗を描いた古い浮世絵は、当然ながらすでに保護期間を過ぎたパブリックドメインの作品です。では、その浮世絵を現代の画家が忠実に「模写」した場合、その模写絵は新しい著作物として保護されるのでしょうか。たとえば、誰かが研究者の模写絵を豆腐のパッケージに無断で使っ... 大熊 裕司