音楽の著作物 複製権依拠性類似性最高裁 「偶然似ただけ」は著作権侵害にならない――ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件(最高裁昭和53年9月7日判決)と「依拠」の要件 2026年8月30日 はじめに 2つの曲がそっくりだったとき、後から作った側は必ず著作権侵害になるのでしょうか。答えは「ならない場合がある」です。著作権侵害というためには、似ていること(同一性・類似性)に加えて、既存の作品を知ってこれを利用したこと(依拠・いきょ)が必要であり、既存の作品を知らずに独自に作った結果、偶然似てしまった場合(偶然... 大熊 裕司
音楽の著作物 翻案依拠性類似性JASRAC 「似ている曲」はどこから著作権侵害になるのか――「どこまでも行こう」対「記念樹」(記念樹事件・東京高裁平成14年9月6日判決) 2026年8月30日 はじめに 「この曲、あの曲にそっくりだ」――音楽の世界では、いわゆる「盗作疑惑」がしばしば話題になります。しかし、メロディーがどの程度似ていれば著作権侵害になるのかを正面から判断した裁判例は、実はそれほど多くありません。 その数少ないリーディングケースが、CMソング「どこまでも行こう」とテレビ番組のエンディング曲「記念... 大熊 裕司
音楽の著作物 演奏権JASRAC最高裁利用主体 歌っているのは客なのに、なぜ店が著作権侵害になるのか――「カラオケ法理」を生んだクラブキャッツアイ事件(最高裁昭和63年3月15日判決) 2026年8月30日 はじめに カラオケスナックで実際にマイクを握って歌っているのは客です。それなのに、著作権(演奏権)を侵害したとして責任を負うのは店の経営者――。この一見不思議な結論を導いたのが、最高裁昭和63年3月15日判決(第三小法廷・昭和59年(オ)第1204号 音楽著作権侵害差止等請求事件)〔判決文PDF・裁判所ウェブサイト〕、... 大熊 裕司
音楽の著作物 演奏権JASRAC公衆フェアユース ダンス教室でCDを流すのは「公衆」への演奏か――ダンス教授所事件(名古屋高裁平成16年3月4日判決)と著作権法の「公衆」概念 2026年8月30日 はじめに 社交ダンス教室のレッスンでは、音楽が欠かせません。教室がCDを再生して受講生にダンスを教えるとき、その再生は著作権法上の「演奏」として、JASRACの許諾(使用料の支払)が必要になるのでしょうか。「相手は契約した生徒だけなのだから、『公衆』に聞かせているわけではない」という反論は通るのでしょうか。 この問題を... 大熊 裕司
音楽の著作物 損害賠償演奏権JASRAC利用主体 ライブハウス経営者は出演バンドの演奏にどこまで責任を負うのか――ライブバー事件(知財高裁平成28年10月19日判決) 2026年8月30日 はじめに ライブハウスで実際に楽器を弾き、歌っているのは出演者です。それでも、JASRACと利用許諾契約を結ばないまま営業を続ければ、店の経営者自身が著作権(演奏権)侵害の責任を負う――。それを正面から示したのが、ライブバー事件の知財高裁平成28年10月19日判決(平成28年(ネ)第10041号 著作権侵害差止等請求控... 大熊 裕司
音楽の著作物 複製権利用主体自動公衆送信権クラウド 自分のCDを自分の携帯で聴くだけのサービスが、なぜ著作権侵害なのか――MYUTA事件(東京地裁平成19年5月25日判決)とクラウドの著作権 2026年8月30日 はじめに 自分で買ったCDの曲を、サーバー経由で自分のスマートフォンに入れて聴く――今では当たり前の使い方です。ところが、スマートフォン普及前夜の平成19年、ユーザーが自分の音楽CDをサーバーにアップロードして自分の携帯電話にダウンロードできるようにするサービス「MYUTA(ミュータ)」について、東京地裁は、複製と送信... 大熊 裕司
音楽の著作物 演奏権JASRAC最高裁利用主体 音楽教室のレッスンで生徒が弾く曲に著作権使用料はかかるのか――JASRAC音楽教室事件・最高裁令和4年10月24日判決 2026年8月9日 はじめに ピアノ教室やボーカル教室のレッスンでは、教師も生徒も、レッスンのたびに数多くの楽曲を演奏します。こうしたレッスン中の演奏は著作権法上の「演奏権」の対象となり、教室の運営者は著作権管理団体に使用料を支払わなければならないのでしょうか。 この問いに答えたのが、最高裁令和4年10月24日判決(第一小法廷・令和3年(... 大熊 裕司
判例紹介 引用発信者情報開示スクリーンショット知財高裁 他人のツイートのスクリーンショット添付は「引用」に当たり得るか——ツイートスクリーンショット事件(知財高判令和5年4月13日) 2026年8月9日 はじめに X(旧Twitter、以下当時の名称で「ツイッター」といいます)では、他人のツイートをスクリーンショット(スクショ)画像にして自分の投稿に添付し、批評やツッコミを加える光景が日常的に見られます。しかし、ツイートも短文とはいえ著作物になり得ます。他人のツイートを画像として丸ごとコピーして投稿する行為は、著作権(... 大熊 裕司
判例紹介 複製権公衆送信権職務著作VTuber VTuberイラストの無断転載ポストにX(旧Twitter)への削除命令——カバー株式会社対X Corp.投稿記事削除請求事件(東京地判令和7年10月30日) 2026年8月9日 はじめに SNS上でイラストを無断転載される被害は、企業・クリエイターを問わず後を絶ちません。無断転載を見つけたとき、まず思い浮かぶ対応は「投稿者本人に削除を求める」「プラットフォームの通報フォームから削除申請をする」というものでしょう。しかし、それでも投稿が消えないとき、権利者には「プラットフォーム事業者そのものを被... 大熊 裕司
言語の著作物 複製権翻案依拠性小説 ネット小説の盗作主張はなぜ退けられたのか――SBクリエイティブ刊行小説への依拠性を否定した知財高裁判決(令和8年6月29日・令和8年(ネ)第10024号) 2026年8月8日 この記事のポイント 結論は請求棄却(控訴棄却)。 裁判所は、被告小説がネット公開された作品に依拠することなく創作されたと認定しており、SBクリエイティブ側に盗作があったと認定された事案ではありません 著作権侵害には「依拠性」(元の作品を材料にしたこと)と「表現の同一性」の両方が必要で、どちらか一方でも欠ければ侵害になら... 大熊 裕司