著作権の利用の「出版権」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。
従来型の出版権は、紙媒体にかかるもので、複製権者(21条)は、その対象となる著作物について、出版してくれる者に対して出版権を設定することができ、出版権者は、複製権者から原稿などその著作物を複製するのに必要な原稿その他の原品に相当する物の引き渡しを受けた日から6月以内に出版行為を行う義務を負う代わりに、出版権者の名において、差止請求、損害賠償請求を行う事ができるというものです。著作権者は、個人である場合も多く、資力のない個人が著作権の侵害に対して訴訟等の対策をこうじるというのは難しいことも多いので、このようなときに出版権者が差止請求、損害賠償請求をすることができるというのは海賊版対策としてとても有効であるといえます。
しかしながら近年では、KindleやiBook等をはじめとする電子書籍がとても注目集めており、このような電子出版についてどのように対応するべきかという問題が生じてきました。
そこで2014年に著作権法が改正され、これまでの出版権と同様の権利を電子出版においても拡張適用できるように法整備が行われました。
この改正によって公衆送信権(23条)を有する者は、記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う者に対して出版権(いわゆる電子出版権)を設定できるようになりました。
最近では、インターネットやスキャナーなどの普及により、いわゆる電子海賊版による著作権侵害が問題となっていますが、2014年の改正により出版権者による電子海賊版に対する差止請求、損害賠償請求が可能となり、電子海賊版に対する対策としても注目を浴びています。