Ⓒ表示について

日本の著作権法では、「無方式主義」を採用しており、これは著作物が創作された時点で自動的に著作権が発生するという仕組みです。無方式主義は、1886年に制定されたベルヌ条約の第5条(2)で規定されており、この条約に基づき、日本を含む多くの国では著作権の保護を得るために特定の手続き(登録や審査など)を必要としないことが特徴です​。

一方で、「方式主義」とは、著作権の享有に一定の方式(例えば登録制度など)を要する制度を指します。かつてアメリカやその他の一部の国々で採用されていましたが、現在ではほとんどの国が無方式主義を採用しているため、方式主義を取る国は非常に少数派です。

Cマークと万国著作権条約

「C表示」、いわゆるⒸマークは、1952年に制定された万国著作権条約に基づく制度です。このマークは、無方式主義を採用する国々の著作物が、方式主義を採用している国で保護を受けるために必要な要件として定められています。具体的には、複製物の最初の発行時から、C表示、著作権者名、そして第一発行年の表示が必要です​。

例えば、著作権法が無方式主義を取る日本では、Cマークが付いていなくても著作権が保護される一方で、方式主義を取る国ではCマークがないと著作権の保護を受けられないことがあります。そのため、国際的に作品を発行・流通させる際には、このCマークの付与が重要な意味を持つことがあります。

日本国内でのCマークの意味

日本の著作権法においては、Cマークの有無が著作権の保護に影響を与えることはありません。これは、日本が無方式主義を採用しているためであり、Cマークがなくても著作権は発生し、保護されます。また、逆にCマークが付いていても、それだけで著作権の保護を受ける作品と認められるわけではありません。

日本国内でCマークを付けることには法的な効果はないものの、現実的には警告的な機能を果たすことがあります。具体的には、著作権者の存在を示し、無断使用を防ぐための警告として機能します。このような表示は、無断使用が著作権侵害となる可能性があることを示す役割を持っているのです​。

著作権保護期間満了後のCマーク使用

著作権の保護期間が満了した著作物にCマークを付けることについては、過去に裁判で争われた事例があります。例えば、ピーターラビット事件では、著作権が消滅した著作物に対してCマークを付与し続けることの適法性が問題となりました。この事件では、著作権の保護が消滅した後もCマークを付与していたことで、商品の内容や品質を誤認させる不正競争行為に該当するかが争点となりました。

裁判所は、このケースにおいて、Cマーク自体が不正競争行為に該当しないと判断しました。しかし、著作物が二次的著作物として新たに創作されている場合、その創作部分に対しては別途著作権が発生するため、場合によってはCマークの使用が不適切とされる可能性があると指摘しています​。

このように、著作権の保護期間が満了した著作物にCマークを付すことは、一概に違法であるとは言い切れません。しかし、無方式主義や方式主義の違い、そして各国の法令に基づく著作権保護の要件を考慮した上で、合理的理由の有無を十分に検討する必要があります。

著作権法の現状とCマークの役割

今日、多くの国々が無方式主義を採用しているため、著作権を得るために特定の手続きを必要としないことが一般的です。しかし、万国著作権条約に基づくCマークは、依然として国際的な著作物保護の一環として重要な役割を果たしています。

特に国際市場に作品を提供するクリエイターにとっては、自国の著作権法のみならず、他国の法令に基づいた保護を受けるために、Cマークを適切に表示することが推奨されます。また、著作権の保護期間が満了している場合でも、一定の条件下ではCマークの使用が許容される場合があるため、法的リスクを回避するためには事前に専門家の助言を受けることが重要です。

まとめ

日本の著作権法においては、無方式主義が採用されており、著作物の創作と同時に著作権が自動的に発生します。そのため、Cマークがなくても著作権の保護を受けることができます。しかし、国際的な著作物保護の観点からは、万国著作権条約に基づくCマークが依然として重要な役割を果たしており、特に方式主義を採用している国々ではCマークの表示が保護要件となることがあります。

また、著作権保護期間が満了した著作物に対してCマークを付与することについては、ケースバイケースで異なる判断が下されているため、リスク管理の観点からは慎重な対応が求められます。法律や判例を正しく理解し、適切に著作権を主張・管理することが、現代のクリエイターや企業にとって重要な課題です。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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