美術の著作物には、著作権法10条1項4号の条文に明示されている絵画、版画、彫刻のほか美的鑑賞の対象となりうるものが美術の著作物に該当するとされています。10条1項4号の条文に明示されているもの以外では、漫画、書、舞台装置、リドグラフや彫像なども美術の著作物に含まれると考えられます。
また著作権法2条2項で美術の著作物には「美術工芸品」を含むものとすると規定されています。
美術の著作物については、純粋美術だけに限定されるか、応用美術も含まれるかという議論があります。応用美術品に対して、意匠権の重畳適用を認めるかということも議論となっています。いまのところ美術の著作物について応用美術が含まれるかどうかについて、最高裁判例で真正面から判断したものはありません。
下級審の判例では、「純粋美術品と同視できる程度に美的鑑賞の対象になる美的特性を備えているかどうか」を基準に判断されているものが多くみられ、応用美術については、美術の著作物としてなかなか認められにくい傾向にあります。
例えば、ファービー人形事件(仙台平成13(う)177号)、タコの滑り台事件(知財高裁令和3(ネ)10044号)や木目化粧紙事件(東京高裁平成2年(ネ)2733号)についてはいずれも著作物性が否定されています。
その一方で、博多人形事件(長崎地方裁判所 佐世保支部 昭和 47年 (ヨ) 53号)や、仏壇彫刻事件(神戸地方裁判所 姫路支部 昭和 49年 (ワ) 291号)では著作物性が肯定されています。