ブログの著作物性

ブログの著作物性について

ライブドア裁判傍聴記事件

平成20年(ネ)第10009号 発信者情報開示等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成19年(ワ)第9982号)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/627/036627_hanrei.pdf

 この事件はブログの著作物性について判断された事件です。

この事件のX(原告・控訴人)は、東京地方裁判所で行われていたライブドアのH氏の対する証券取引法違反事件を傍聴し、その傍聴内容をメモし、そのメモをもとに原告傍聴記Xを作成し、インターネットを通じて、原告傍聴記Xを公開しました。
その後、X氏の傍聴記Xは、第三者により、この事件の被告であるヤフー株式会社が管理運営する「Yahoo!ブログ」(以下「本件サービス」という。)に別紙ブログ記事1及び同ブログ記事2(以下順に「本件ブログ記事1」、「本件ブログ記事2」といい、両者を併せて「本件ブログ記事」という場合がある。)が原告に無断で掲載されました。

そして、原告は被告に対して、本件ブログ記事が原告の傍聴記Xに対する著作権を侵害すると主張して、①特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、本件ブログ記事の発信者の情報開示を求めるとともに、②著作権法112条2項に基づき、本件ブログ記事の削除を求めました。

原審・東京地方裁判所では、原告の傍聴記Xは著作権法2条1項1号の「著作物」に該当しないとの理由により、プロバイダ責任制限法4条1項及び著作権法112条2項の適用はしないとして原告の請求を棄却したので、原告は控訴しました。

控訴審の知財高裁では、原告の傍聴記Xについて、以下のように判断しています。

 知財高裁の判決のポイント

知財高裁は、「著作権法による保護の対象となる著作物は,『思想又は感情を創作的に表現したもの』であることが必要である(著作権法2条1項1号)」とし、「著作権法2条1項1号所定の『創作的に表現したもの』というためには、当該記述が,厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でないが、記述者の何らかの個性が表現されていることが必要」であるとしています。

また、著作権法2条1項1号所定の「思想又は感情を表現した」というためには、記述者の「思想又は感情」が表現されることが必要であり、言語表現による記述等における表現の内容が、専ら「事実」(この場合における「事実」とは、特定の状況、態様ないし存否等を指すものであって、例えば「誰がいつどこでどのようなことを行った」、「ある物が存在する」、「ある物の態様がどのようなものである」ということを指す。)を、格別の評価、意見を入れることなく、そのまま叙述する場合は、記述者の「思想又は感情」を表現したことにならない(著作権法10条2項参照)と述べています。

そして、本件については、原告傍聴記Xにおける証言内容を記述した部分(例えば,「○ライブドアの平成16(2004)年9月期の最初の予算である」「○各事業部や子会社の予算案から作成されている」)等は、証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか、又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから、原告の個性が表れている部分はなく、創作性を認めることはできないとして、原告の傍聴記Xについては著作物であると認めることはできないとし、本件ブログ記事のウエブサイトへの掲載がプロバイダ責任制限法4条1項に該当するとはいえず、また、著作権侵害行為ともいえないと判断して本件控訴を棄却しました。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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