人格権に関連する「京都府学連事件(最高裁判所大法廷昭和44年12月24日判決)」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。
この最高裁判決以後、日本において肖像権がみとめられつつようになったという重要な事件です。
京都府学生自治会連合(以下、「京都府学連」)は、1962年6月21日に京都市公安条例(集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例)上の許可を得た上でデモを行いました。
京都市公安委員会はデモの許可をする際に、「許可を与える際必要な条件をつけることができる」(京都市公安条例第6条)という規定に基づき、行進隊列と進行方法について条件付きで許可を与えていました。しかしながらこの条件がデモ隊全体に熟知されていなかったため、被告人らにより条件違反行為がなされました。
許可条件違反等の違法状況の視察、採証の職務に従事していた京都府山科警察署勤務の巡査が違反状況を確認後、デモ隊の先頭集団を写真撮影しました。巡査の撮影行為に気が付いた被告は、巡査に対して憤慨し、暴力をふるい、全治一週間の傷害を負わせ、公務執行妨害罪及び傷害罪で起訴されました。それに対して被告側は、巡査の行為は違法捜査であるので、公務執行妨害罪は成立しないと主張しました。
本判決の中で最高裁は1.「みだりに容ぼう等を撮影されない自由と憲法一三条」、2.「犯罪捜査のため容ぼう等の写真撮影が許容される限度と憲法一三条、三五条」について判断しています。
最高裁は、1.については「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法一三条の趣旨に反し許されない。」 、2.については「警察官による個人の容ぼう等の写真撮影は、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、証拠保全の必要性および緊急性があり、その撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるときは、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、憲法一三条、三五条に違反しない。」として被告の上告は棄却されました。