著作物の「キャラクターに関する著作権」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。
キャラクターという言葉から、例えば、漫画の登場人物(ドラえもん)を思い浮かべると思います。このように、具体的に表現されたキャラクターが著作物として保護の対象となることは間違いありません。著作物の種類としては、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」(著作権法10条1項4号)に該当するといえます。
しかし、著作権法の教科書で、キャラクターの著作物についての解説を見てみると、キャラクターが著作権法では保護されないのではないかという印象を持ってしまいます。これは、著作権法の教科書に必ず紹介されているキャラクターの著作物性について判断した「ポパイ・ネクタイ事件」という最高裁判例(最判平成 9年 7月17日民集51巻6号2714頁)の判決を理解するのが難しいからです。以下、「ポパイ・ネクタイ事件」の重要部分について引用します。
著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。したがって、一話完結形式の連載漫画においては、著作権の侵害は各完結した漫画それぞれについて成立し得るものであり、著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない。
最高裁が説示している「キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができない」を見てみると、キャラクターとは抽象的概念であり、具体的表現ではないので著作権法で保護されないものだと読めてしまいます。これは、最高裁が、当事者の主張を前提としたキャラクターを前提にしたからであり、「ポパイ・ネクタイ事件」におけるキャラクターとは、漫画に具体的に表現されている「ポパイ」を前提としているのではなく、世間で「ポパイ」として考えられている「ポパイ」像、「ポパイ」のイメージ(キャラクター設定ともいえます)それ自体が著作物として保護されるという主張に対して判断したため、上記のような判決の表現になったといえます。
したがいまして、あるキャラクターの人物像、設定などの抽象的なレベルでの概念は著作物とはいえず保護の対象にはなりませんが、そのようなキャラクター像(設定)が具体的に漫画の形で表現された場合は、それは具体的な表現となっているので、著作物として保護の対象となります。
なお、漫画のキャラクターについては、著作権法で保護されますが、商標登録をすることにより、商標権として保護を図る方法もあります。