法政大学懸賞論文事件(東京高裁平成3年12月19日判決)

著作権に関連する裁判の判例である「法政大学懸賞論文事件(東京高裁平成3年12月19日判決)」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。

原告Xは、訴外A教授のゼミナールに参加して研究を続けた成果を論文(以下、「X論文」とする。)にまとめました。X論文は被告Y大学の懸賞論文選考で優秀賞を付与され、Y大学発行の雑誌「法政」に掲載・出版されましたが、その際にXの承諾なく53か所の削除変更がされていました。
Xは、Y大学のX論文を掲載してY雑誌を出版した行為につき複製権侵害、そしてX論文についての削除・変更行為につき同一性保持権侵害を主張して損害賠償請求及びに新聞紙上への謝罪文の掲載を求めて訴えを提起しました。
これに対して大学側は、X論文の掲載は、Xの承諾を受けて行ったものであるので複製権侵害ではないと主張しました。また同一性保持権侵害については、Y大学の懸賞論文制度は、教育実践の一つであり、応募者は教員の採点、添削等を受け、論文の編集、校正を委ねる旨の意思表示も含まれている事、またこれらの改変は著作権法20条2項3号(現在は4号)のやむを得ない改変にあたると主張しました。
本件では、複製権侵害については、Y大学のX論文掲載にはXの黙示の許諾があるとしました。
同一性保持権については、「『著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変』の意義についてみると、同条二項の規定が同条一項に規定する同一性保持権による著作者の人格的利益保護の例外規定であり、かつ、例外として許容される前記の各改変における著作物の性質(主として前記二号の場合)、利用の目的及び態様(前記一号、二号)に照らすと、同条三号の『やむを得ないと認められる改変』に該当するというためには、利用の目的及び態様において、著作権者の同意を得ない改変を必要とする要請がこれらの法定された例外的場合と同程度に存在することが必要であると解するのが相当」であるとして、一審では非侵害とされていた1.送り仮名の変更(例:「現われ」を「現れ」)、2.読点の使い方の変更(例:「...、等」を「......等」)、3.中黒の読点への変更(例:「」・「」を「」、「」)についても同一性保持権侵害が成立すると判断しました。
ただし、1.加算誤りの訂正、2.明らかな誤植の訂正については同一性保持権侵害に当たらないと判断しています。

このように20条2項の適用除外については厳格に適用されておりますので、著作物の利用の際には十分な留意が必要と言えます。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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