貸与権とは?レンタルビジネスに必要な著作権をわかりやすく解説【具体例つき】

【この記事の3行まとめ】

  • 貸与権(著作権法26条の3)=著作物の複製物を「公衆に」貸与する行為をコントロールする権利(映画の著作物は頒布権でカバー)
  • レンタルCD・コミックレンタル等の事業には権利者の許諾(使用料)が必要になる根拠規定。貸レコード店の急増を受けた昭和59年改正で導入されました
  • 「公衆に」が要件なので友人・家族間の貸し借りには及ばず、非営利・無料の貸与には権利制限(38条4項)があります――図書館の貸出しが適法な理由です

はじめに――「借りて済ませる」ビジネスと著作権

レンタルCD、コミックレンタル、かつての貸本屋やレンタルビデオ――「買わずに借りる」という利用の形は、著作物の複製物を「貸す」ことを商売にするビジネスによって支えられてきました。しかし権利者の側から見ると、1枚のCDが何十人にも貸し出されれば、その分だけ売上が失われかねません。

この利害調整のために設けられたのが貸与権(著作権法26条の3)です。この記事では、貸与権の内容と歴史(なぜ・どのように導入されたのか)、権利が及ばない場合(非営利無償の貸与・図書館)、レンタルビジネスの実務までをわかりやすく解説します。

前提知識――「貸与」と「公衆」の意味

貸与権を理解するには、2つの定義を押さえる必要があります。

  • 公衆――著作権法の「公衆」には「特定かつ多数の者」が含まれます(2条5項)。不特定の者に貸すレンタル店の顧客はもちろん、特定でも多数であれば「公衆」です。逆に、友人・家族といった特定少数への貸し借りは「公衆」への貸与ではありません
  • 貸与――名義・方法を問わず「これと同様の使用の権原を取得させる行為」を含みます(2条8項)。たとえば買戻し特約付きの「販売」など、形式は譲渡でも実質がレンタルであれば貸与として扱われます。脱法的なスキームを防ぐための定義です

貸与権とは――26条の3

条文は次のとおりです。

第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

ポイントは3つです。

  • 対象は「複製物の貸与」――CD、書籍・コミック、ゲームソフト(映画の著作物にあたらないもの)など、複製物を公衆に貸す行為が対象です
  • 映画の著作物は除外――DVDなど映画の著作物の貸与は、頒布権(26条。譲渡・貸与の両方を含む強力な権利)でカバーされるため、貸与権の対象から外されています。レンタルビデオ・DVD店が権利者の許諾を要するのは頒布権によるものです
  • 有償・無償を問わない――条文は営利性を要件としていません。無料の貸出しでも「公衆への貸与」なら原則として権利が及びます(後述の38条4項の権利制限が重要になります)
貸与権の構造(公衆への貸与・例外)
貸与権の構造(公衆への貸与・例外)

立法の歴史――貸レコード店とコミックレンタル

昭和59年改正――貸レコード問題への対応

制定当初(昭和45年)の著作権法に貸与権はありませんでした。転機は1980年代初頭、レコードを安価に貸し出す「貸レコード店」の急速な普及です。借りたレコードをカセットテープにダビングして返す、という利用が広がり、レコードの売上への深刻な影響が問題となりました。ダビング自体は私的複製(30条1項)として適法に行われ得るため、権利者は「貸す」行為そのものをコントロールする必要に迫られたのです。

この問題にはまず、昭和58年(1983年)に議員立法による暫定措置法(商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法)で応急の手当てがされ、翌昭和59年(1984年)の著作権法改正で著作物一般についての貸与権が正式に導入されました(暫定措置法は廃止。中山信弘『著作権法〔第4版〕』347頁参照)。著作者(26条の3)だけでなく、実演家(95条の3)・レコード製作者(97条の3)にも貸与に関する権利が認められています(商業用レコードについては発売後一定期間経過後は報酬請求権に移行する仕組みです)。

平成16年改正――書籍・雑誌への全面適用

導入当時、古くから続く貸本業に配慮して、書籍・雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く)の貸与には「当分の間」貸与権を適用しないという経過措置(附則4条の2)が置かれていました。しかし2000年代に入り、従来型の貸本業に代わって大手チェーンによるコミックレンタル事業が出現したことを受けて、平成16年(2004年)改正でこの附則は廃止され、映画の著作物を除くすべての著作物に貸与権が及ぶことになりました(既得権保護のため、施行時に現に貸与目的で所持されていた書籍・雑誌には従来どおりとする手当てが置かれています。中山・前掲347〜348頁参照)。現在のコミックレンタルは、権利者側の許諾(使用料の支払い)の下で運営されています。

譲渡権との対比――「古本屋は自由、貸本屋は許諾必要」の理由

貸与権を理解するうえで役立つのが、譲渡権(26条の2)との対比です。譲渡権には「消尽」という仕組みがあり、権利者がいったん適法に販売した複製物については、その後の転売に権利が及びません。古本屋や中古CD店が権利者の許諾なしに営業できるのはこのためです(詳しくは譲渡権と消尽の解説記事をご覧ください)。

これに対して貸与権は、複製物が適法に販売された後も消尽しません。貸与は「貸して、返してもらって、また貸す」ことを何度でも繰り返せる利用形態であり、一度の譲渡で権利者の対価回収が終わったとみることができないからです。もし最初の販売で貸与権まで消尽するなら、レンタル店は市販のCDを買ってくるだけで自由に貸出しビジネスができることになり、制度の趣旨が失われます。

整理すると、同じ複製物でも「売る」のは自由(消尽)、「公衆に貸す」のは許諾が必要(不消尽)――これが古本業と貸本業の法的な分かれ目です(中山信弘『著作権法〔第4版〕』345〜346頁参照)。

譲渡権(消尽する)と貸与権(消尽しない)の対比
譲渡権(消尽する)と貸与権(消尽しない)の対比

権利が及ばない場合――非営利無償の貸与(38条4項)

貸与権には重要な権利制限があります。

4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。

営利を目的とせず、かつ②貸与を受ける者から料金を受けない場合には、許諾なく公衆に貸与できます。公立図書館の貸出しが適法なのはこの規定によるものです。

なお、映画の著作物(ビデオ・DVD等)はこの4項の対象外ですが、視聴覚ライブラリーなど政令で定める非営利施設が料金を受けずに貸し出す場合の特例が38条5項にあり、この場合は頒布権者への相当な額の補償金の支払いが必要とされています。

実務のポイント――レンタルビジネスを始める前に

  • 許諾の取得が大前提――CD・書籍等のレンタル事業は、権利者(著作者・実演家・レコード製作者等)側の許諾と使用料の支払いが必要です。実務では、権利者団体・管理事業者を通じた包括的な許諾スキームが整備されている分野が多く、業界団体への加盟とセットで処理されるのが一般的です
  • 「無料貸出し」も要注意――貸与権は無償の貸与にも及びます。38条4項が適用されるのは「営利を目的としない」場合ですので、店舗の集客・販促の一環としての無料貸出しは「営利目的」と評価され、許諾が必要になり得ます
  • 実質貸与の「販売」スキームは通用しない――買戻し特約付き譲渡など、名目を変えても実質が貸与であれば貸与権の対象です(2条8項)
  • 電子書籍・配信の「レンタル」は別の権利の問題――貸与権は有体物である複製物の貸与を対象とします。電子書籍や動画配信サービスの「レンタル」は、データの送信=公衆送信権(23条)等の許諾の問題であり、法的な仕組みが異なります

よくある質問(FAQ)

Q1. 貸与権とはどんな権利ですか?

A. 著作物の複製物を公衆に貸与する行為について、著作権者が許諾するかどうかを決められる権利です(著作権法26条の3)。映画の著作物は頒布権(26条)でカバーされるため対象外です。

Q2. 友人にCDや本を貸すのも貸与権侵害になりますか?

A. なりません。貸与権が及ぶのは「公衆に」貸与する場合であり、友人・家族間など特定少数の間の個人的な貸し借りは対象外です。

Q3. レンタルショップはなぜ営業できるのですか?

A. 権利者側の許諾を得て、使用料を支払っているためです。無許諾でレンタル事業を行えば貸与権(DVD等については頒布権)の侵害となり、差止め・損害賠償の対象になります。

Q4. ゲームソフトやDVDのレンタルはどの権利の問題ですか?

A. DVDなど「映画の著作物」の複製物の貸与は、貸与権ではなく頒布権(26条)の問題です。ゲームソフトも映画の著作物にあたるとされたものがあり(最高裁の中古ゲームソフト事件は家庭用ゲームソフトを映画の著作物と認めています)、その場合の貸与も頒布権の対象になります。いずれにしてもレンタル事業には権利者の許諾が必要です。

Q5. 図書館の貸出しはなぜ無料でできるのですか?

A. 営利を目的とせず、利用者から料金を受けない貸与は、権利制限規定(38条4項)により許諾なく行えるためです。映画の著作物については、政令で定める視聴覚ライブラリー等による貸出しに補償金の支払いを条件とする特例(38条5項)があります。

まとめ

  • 貸与権(26条の3)は、著作物の複製物を公衆に貸与する行為をコントロールする権利。貸レコード問題を受けた昭和59年改正で導入され、平成16年改正でコミックレンタルにも全面適用された
  • 友人・家族間の貸し借りには及ばず、非営利・無料の貸与は38条4項により適法(図書館の貸出し)
  • レンタル事業は権利者の許諾+使用料が大前提。名目を「販売」にしても実質が貸与なら貸与権の対象になる(2条8項)

レンタル・シェアリング型の新しいビジネスモデルを検討する際は、貸与権・頒布権・公衆送信権のどれに触れるのかの整理が出発点になります。事業設計の段階で、著作権に詳しい弁護士にご相談ください。

出典・参考判例/参考文献

  • 著作権法2条5項・8項、26条、26条の3、30条1項、38条4項・5項、95条の3、97条の3(条文はe-Gov法令検索の現行法で照合)
  • 中山信弘『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2024年)345〜350頁(貸与権。立法経緯・平成16年改正による附則4条の2の廃止を含む)

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本記事は、一般的な法律情報の提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。実際の対応にあたっては、必ず弁護士にご相談ください。

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