北朝鮮事件最高裁判決

著作権に関連する裁判の判例である「北朝鮮事件最高裁判決」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。

本件は未承認国である北朝鮮の著作物について我が国は保護する必要があるのかについて判断がしめされた事件です。
映画「司令部を遠く離れて」(以下、「本件映画」とする。)は、昭和53年に北朝鮮国民であるBにより製作されました。X1(原告、控訴人)は、北朝鮮の民法によって権利能力が認められている北朝鮮文化省傘下の行政機関であり、同省により、本件各映画について北朝鮮の法令に基づく著作権を有する旨が確認されているX2(原告、控訴人)から本件映画等について、日本国内での独占的な上映、放送、第三者に対する使用許諾等について許諾を得ました。
AはX1、X2の許諾を受けることなく、平成15年12月15日に本件映画をニュース番組において北朝鮮における映画を利用した国民に対する洗脳教育の状況を報ずる目的で使用しました。この企画の放送時間は6分でそのうちの2分8秒が本件映画の放送でした。
北朝鮮は、平成15年1月28日、世界知的所有権機関の事務局長に対し、同条約に加入する旨の加入書を寄託し、同事務局長は,同日、その事実を同条約の他の同盟国に通告し、これにより、同条約は、同年4月28日に北朝鮮について効力を生じた。日本は、北朝鮮を国家として承認しておらず、外務省及び文部科学省は、我が国が、北朝鮮の国民の著作物について、ベルヌ条約の同盟国の国民の著作物として保護する義務を同条約により負うとは考えていない旨の見解を示しています。
これに対してX1、X2は、本件映画はベルヌ条約に加盟している北朝鮮国民の著作物であるので著作権法6条3号により保護されるべきものであるとの主張をしています。
これに対して、最高裁は「一般に,我が国について既に効力が生じている多数国間条約に未承認国が事後に加入した場合,当該条約に基づき締約国が負担する義務が普遍的価値を有する一般国際法上の義務であるときなどは格別,未承認国の加入により未承認国との間に当該条約上の権利義務関係が直ちに生ずると解することはできず,我が国は,当該未承認国との間における当該条約に基づく権利義務関係を発生させるか否かを選択することができるものと解するのが相当である。
これをベルヌ条約についてみると,同条約は,同盟国の国民を著作者とする著作物を保護する一方(3条(1)(a)),非同盟国の国民を著作者とする著作物については,同盟国において最初に発行されるか,非同盟国と同盟国において同時に発行された場合に保護するにとどまる(同(b))など,非同盟国の国民の著作物を一般的に保護するものではない。
したがって,同条約は,同盟国という国家の枠組みを前提として著作権の保護を図るものであり,普遍的価値を有する一般国際法上の義務を締約国に負担させるものではない。そして,前記事実関係等によれば,我が国について既に効力を生じている同条約に未承認国である北朝鮮が加入した際,同条約が北朝鮮について効力を生じた旨の告示は行われておらず,外務省や文部科学省は,我が国は,北朝鮮の国民の著作物について,同条約の同盟国の国民の著作物として保護する義務を同条約により負うものではないとの見解を示しているというのであるから,我が国は,未承認国である北朝鮮の加入にかかわらず,同国との間における同条約に基づく権利義務関係は発生しないという立場を採っているものというべきである。
以上の諸事情を考慮すれば,我が国は,同条約3条(1)(a)に基づき北朝鮮の国民の著作物を保護する義務を負うものではなく,本件各映画は,著作権法6条3号所定の著作物には当たらないと解するのが相当である。」として、日本は北朝鮮国民の著作物について保護する義務はないとしました。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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