SMAPインタビュー事件(東京地裁平成10年10月29日判決)

著作権に関連する裁判の判例である「SMAPインタビュー事件(東京地裁平成10年10月29日判決)」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。

本件は、インタビュー記事の著作者及び著作権者は誰になるのかについて判断が示された事件です。
原告X1~X6はアイドルグループ「SMAP」のその当時のメンバーで、X7~X10は出版社です。X7~X10の編集部は、SMAPのメンバーへのインタビュー記事を雑誌に掲載することを企画し、質問内容等を決め、執筆者に記事の作成を依頼しました。
執筆者は、スマップのメンバーに一問一答形式でインタビューし、同取材をもとに企画のテーマにそって話題の取捨選択等をしわかりやすくまとめ、編集部は同原稿をチェックし、修正が必要な場合などは手直しを指示し、その後、原告記事を掲載した雑誌が発行されました。執筆者は、原告記事の著作権がX7~X10に帰属することを了解していました。
被告Y1は出版物の編集、発行等を業とする株式会社で、被告Y2はその代表取締役でした。被告は、著者を「SMAP研究会」、Y2を発行人とする書籍「SMAP大研究」を平成7年6月12日に出版、発売しました。
Xらは、被告書籍はX1~X6とX7~X10の共同著作による原告記事の複製権及び翻案権、同一性保持権および氏名表示権を侵害するとして、被告書籍の複製等の差止及び廃棄等を請求しました。本件訴訟の争点2「原告記事の著作権及び著作者人格権は誰に帰属するか」において、東京地裁は以下のように判事しております。
「インタビュー等の口述を基に作成された雑誌記事等の文書については、文書作成への関与の態様及び程度により、口述者が、文書の執筆者とともに共同著作者となる場合、当該文書を二次的著作物とする原著作物の著作者であると解すべき場合、文書作成のための素材を提供したにすぎず著作者とはいえない場合などがあると考えられる。
すなわち、口述した言葉を逐語的にそのまま文書化した場合や、口述内容に基づいて作成された原稿を口述者が閲読し表現を加除訂正して文書を完成させた場合など、文書としての表現の作成に口述者が創作的に関与したといえる場合には、口述者が単独又は文書執筆者と共同で当該文書の著作者になるものと解すべきである。
これに対し、あらかじめ用意された質問に口述者が回答した内容が執筆者側の企画、方針等に応じて取捨選択され、執筆者により更に表現上の加除訂正等が加えられて文書が作成され、その過程において口述者が手を加えていない場合には、口述者は、文書表現の作成に創作的に関与したということはできず、単に文書作成のための素材を提供したにとどまるものであるから、文書の著作者とはならないと解すべきである。」

本件については、原告X1~X6は出版社の企画にそって記事を作成するために素材を提供したにすぎないとして、著作者として認められませんでした。尚、出版社に対する著作権侵害は認められています。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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