令和3年著作権法改正

平成3年の著作権法改正は、図書館の利用者や関係者にとって非常に重要な意味を持つものでした。この改正により、図書館が所蔵する資料のデジタル化やネットワークを介した利用が大幅に拡充され、特にコロナ禍での利用制限に対応するための措置が導入されました。本ブログでは、この改正の背景と具体的な内容、そしてその影響について詳しく解説します。

1. 改正の背景

著作権法の図書館に関する権利制限規定は、従来のままではデジタル化やインターネットを介した利用に十分に対応できないとされていました。特に、図書館が物理的に閉館している状況や、利用者が病気や障害を持つために図書館へ直接足を運べない場合、または近隣に図書館が存在しない場合など、多様な状況に対応するための法的整備が求められていたのです。

今回の改正は、これらの課題に対応し、特に新型コロナウイルス感染症の流行による図書館の閉館措置を受けて行われました。デジタル化とネットワークを活用することで、地理的や物理的な制約を超えて、国民が知識にアクセスできる環境を整備し、研究活動を持続的に促進することを目的としています。

2. 国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信

改正により、国立国会図書館は「特定絶版等資料」のインターネット送信を個人向けに提供できるようになりました。この「特定絶版等資料」とは、絶版などにより一般的に入手が困難な図書館資料を指し、国立国会図書館の館長が一定の条件を満たすと判断したものです。例えば、紙の書籍が絶版であり電子出版されていない場合や、非常に少数部数しか発行されていない大学紀要や郷土資料などがこれに該当します。

3. 利用者へのアクセスとその制限

利用者が国立国会図書館が送信する絶版等資料にアクセスするためには、事前に図書館への登録が必要です。この登録には、不正利用を防ぐための利用規約への同意が求められます。また、資料の閲覧は可能ですが、データのダウンロードは法律で禁止されています。これにより、資料が不正に拡散され、権利者の利益が不当に害されることを防ぐ措置が取られています。

ただし、利用者は資料を必要な範囲でプリントアウトすることができ、この点で利用者の利便性が確保されています。

4. 図書館資料の公衆送信と著作権者の利益保護

改正法は、図書館が所蔵する資料の公衆送信を可能にしましたが、これにより正規の出版市場に悪影響を与える可能性が懸念されました。例えば、電子配信されている新刊本が図書館からも同時に公衆送信されることで、商業的な配信と競合する状況が生じる可能性があります。

そこで、改正法では「著作権者の利益を不当に害する場合」には送信を行わないという要件を設け、この要件を満たさない場合には送信が認められないようにしています。この要件の具体的な解釈や運用については、文化庁の関与の下、中立的な第三者を交えた協議によりガイドラインが作成される予定です。

5. 公衆送信が可能な資料の範囲

図書館等が公衆送信できる資料の範囲は、著作物の「一部分」に限られています。具体的には、現行の紙の複製において著作物の半分を超えない部分と解釈されています。しかし、著作権者の利益を不当に害する恐れがある場合には、この一部分の範囲であっても送信が制限される可能性があります。

一方で、国が作成した広報資料や調査統計資料など、国民が利用することが想定されており、著作権者の利益を損なわないと認められる場合には、その全体を送信できる場合もあります。

6. 図書館資料の海外利用

改正法では、図書館資料の公衆送信が国内に限られないとされていますが、実際には各図書館が設置目的に応じて範囲を判断することになります。例えば、公共図書館ではその地域に住む利用者が主な対象となるため、海外からの利用については図書館ごとに異なる対応がとられる可能性があります。

さらに、海外での不正なデータ拡散を防ぐための措置や、送信先国の法律との適合性を確認する必要があり、これらの課題をクリアした上で実施が判断されます。

7. 補償金制度の設定

図書館資料の公衆送信に伴う補償金制度も改正法の一部です。この補償金は、図書館資料の送信により権利者が受ける逸失利益を補填するためのもので、図書館等の設置者が支払うこととされています。ただし、実際には送信サービスの受益者である図書館利用者が補償金を負担することが想定されており、その料金体系や金額設定については指定管理団体が行うこととなっています。

8. 放送番組のインターネット同時配信等の権利処理

さらに、今回の改正では、放送番組のインターネット同時配信における権利処理の円滑化も図られました。放送では許諾が得られても、同時配信では許諾が得られない場合が多く、このために番組の一部を差し替える必要が生じるなど、従来の制度では対応しきれない問題がありました。

今回の改正により、放送と同じタイミングでの同時配信や追っかけ配信、見逃し配信が可能となり、放送と同等の扱いが受けられるように整備されました。また、権利者から許諾が得られない場合でも、一定の補償金を支払うことで許諾なく利用できる規定も設けられました。

9. 最後に

平成3年の著作権法改正は、デジタル時代の進展に対応し、図書館や放送事業者がその機能を最大限に発揮できるようにするための大きな一歩です。図書館利用者にとっても、より便利でアクセスしやすい情報環境が整備され、知識の共有が促進されることが期待されます。この改正を機に、さらに多くの人々が図書館や放送コンテンツを通じて豊かな知識にアクセスできる社会の実現が望まれます。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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