劇場用映画に関する著作権

著作物の「劇場用映画に関する著作権」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法や著作物・版権などに関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。

 著作権法上では、映画それ自体についての定義規定が設けられていませんが、著作権法第2条第3項において、「この法律にいう『映画の著作物』には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。」とされていて、映画館で上映されるようないわゆる「劇場映画」だけでなく、物に固定されていればテレビドラマやアニメ、テレビコマーシャルも映画の著作物ということになります。
 またゲームソフトが映画の著作物にあたるかどうかについては、「中古ゲームソフト事件」(最高裁 平成14年4月25日)で争われ、最高裁は、「(ゲームソフトは)著作権法2条3項に規定する『映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物』であり,同法10条1項7号所定の『映画の著作物』に当たる」との判断を示し、それ以降、ゲームソフトは映画の著作物ということになりました。
 映画の著作者は、第15条の職務著作に該当する場合は、その法人等になりますが(第16条但書)、それ以外の場合は、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」になります。つまり、映画に使われている主題歌や挿入歌の作詞・作曲者等は、映画の著作物の全体的な形成に寄与している訳ではないので、これらのものは映画の著作者ではありません。また、映画に出演している俳優は実演家として著作隣接権で保護されますが、通常は映画の著作者ではないということになります。
 また、映画については、多大な製作費用がかかり、また映画の製作には多くの人間がかかわっている事から、このような事情を考慮した規定がいくつかあります。
 映画の著作物の著作権の帰属については第29条で規定されており、「映画の著作物(第十五条第一項、次項又は第三項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」と規定されています。これは、映画製作者に、権利を帰属させることにより、著作物を円滑に利用できるようにし、映画製作にかけた費用を回収しやすくするという狙いがあります。もちろん著作権は、契約で譲渡できるので、映画製作者が映画監督に著作権を譲渡した場合は、映画の著作権者は映画監督ということになります。
 あと、映画ならではというと頒布権(第26条)があります。譲渡権(第26条の2)は一度適法に譲渡行為が行われると消尽しますが、頒布権は、原則として消尽しません。
 これは、映画業界の商慣習で、映画会社から映画館に上映フィルムを配給するという流れになっているので、映画館同士でフィルムを勝手にやりとりされてしまうと、映画製作者が費用の回収ができなくなる等の問題が生じるため、映画だけに頒布権が認められています。
 但し、ゲームソフトについては、上述の最高裁判決でいったん適法に譲渡されれば、頒布権は消尽すると判断されています。
 また、映画の著作物の保護期間は公表後70年となっています(第54条)。映画の製作には、監督、演出、撮影、美術等多数の者が関与していますので、共同著作物のように最後の死亡者の死後50年等としてしまいますとどこからどこまでが著作者なのか確定する必要があり、映画の流通や利用に大きな支障をきたすおそれがあるので、保護期間が確定しやすいように公表後70年としています。

映画の著作物は第10条第1項第7号に例示されております。
一般的には映画館で見るときの映画フィルムが該当します。映画フィルム以外にも、ビデオテープやDVDに映像を焼き付けた場合にも映画の著作物として保護を受け得ますが、映画の著作物には固定性が必要とされていますので、生放送のTVは保護されません。
著作権法には映画著作物の規定がない為、中古ゲームソフト事件においては、ゲームソフトが映画の著作物になるか争われました。最高裁は、本判決においてゲームソフトは映画の著作物に該当するが、伝統的な映画フィルムと違い頒布権は消尽すると判断しました。
映画の定義著作権法には、映画それ自体の定義は設けられていませんが、頒布権に関する規定など一般の劇場用映画作品を念頭に置いた規定が置かれています。これに加え、テレビ番組全般、アニメ、ビデオグラム、CM用のフィルムなどもこれに該当するものの、映画の著作物には後述の映画類似の著作物も含まれるので、映画それ自体の定義をする意味に乏しいのが現状です。
もっとも、動画であれば直ちに映画の著作物になるわけではなく、一般の著作物と同様に著作物であるためには表現の創作性が要求されるので、監視のために固定されたビデオカメラなどによって撮影された動画は、創作性のある編集が施されているような事情でもない限り、映画の著作物に該当するか否か以前の問題として、そもそも著作物ではないと考えられます。
映画類似の著作物著作権法上の映画の著作物は、「映画の効果に類似する視覚的又は視覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」を含みます(2条3項)。したがって、映画を収録したビデオテープやDVDも映画の著作物として保護されることになります。
これに対し、ゲームソフト、特にロールプレイングゲームたるソフトは、プレイヤーの操作により表示画面の内容が異なることもあり、「固定の要件」との関係でも映画類似の著作物であるか否かが問題となります。この点について、下級審では判断が分かれていましたが、最高裁判例では、映画の著作物であることが肯定され、この点については決着しました。
ただし、ゲームソフトであれば直ちに映画の著作物になるわけではありません。「三國志III事件」の控訴審においては、画面の大半が静止画像であり、連続的な動きを持った影像はほとんど用いられていなかったことから、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる」ものとは認められず、映画類似の著作物であるとは認められないとしたものもあります(東京高判平成11年3月18日判例時報1501号79頁)。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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