YOL事件(知財高裁平成17年10月6日判決)

著作権に関連する裁判の判例である「YOL事件(知財高裁平成17年10月6日判決)」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。

この事件は新聞記事の見出しについての著作物性が争われた事件です。
原告Xは大手新聞社で、ウェブサイト「ヨミウリ・オンライン」でXのニュース記事本文(以下「YOL記事」という。)と記事見出し(以下「YOL見出し」という)を掲出するとともに「Yahoo!ニュース」に有償でYOL記事、YOL見出しを提供しています。
「Yahoo!ニュース」にはYOL見出しが表示され、それが「ヨミウリ・オンライン」のYOL記事にリンクされていました。なお、「Yahoo!ニュース」には、他の報道機関の記事見出しも表示されています。
被告Yは、「ライントピックサービス」と称して、「Yahoo!ニュース」の記事の中から重要度・関心度が高いと思われるニュースを選択した上、1.Yのウェブサイトにおいて、「Yahoo!ニュース」の当該ニュースへのリンクを張り、そのリンクボタンを当該ニュースの見出し記事と同一または実質的に同一の語句(以下「LTリンク見出し」)とし、2.ライントピック登録ユーザにLTリンク見出し及びリンク先データを送信して、ユーザのホームページ上にも、「Yahoo!ニュース」にリンクしたLTリンク見出しが表示されるようにしていました。
原告Xは1.YOL見出しが著作物であり、Yの行為は複製権及び公衆送信権の侵害であること(主位的主張)、2.Yの行為は一般不法行為を構成する(予備的主張)と主張しました。
本判決においては、「マナー知らず大学教授、マナー本海賊版作り販売」、「A・Bさん、赤倉温泉でアツアツの足湯体験」等のYOL見出しについていずれも著作物性が否定されましたが、一般不法行為の成立は認めました。
俳句や短歌については一般的に著作物性が認められていますが、記事の見出しや、キャッチフレーズ、標語のような短い言語表現については著作物性が認められることは困難と言えます。このYOL事件でも、Xの記事の見出しについていずれも著作物性が否定されました。

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大熊裕司
弁護士 大熊 裕司
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