著作権の権利制限の「検討の過程における利用(第30条の3)」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。
著作権法30条の3は「検討の過程における利用」に関する規程です。条文の規定は以下の通りです。
(検討の過程における利用)
第30条の3 著作権者の許諾を得て,又は第67条第1項,第68条第1項若しくは第69条の規定による裁定を受けて著作物を利用しようとする者は,これらの利用についての検討の過程(当該許諾を得,又は当該裁定を受ける過程を含む。)における利用に供することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,当該著作物を利用することができる。ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。
企業がキャラクター商品の開発や販売の企画を行うに当たり、そのキャラクターの著作権者の許諾を得る前に、企画書等にキャラクターを掲載することがあります。このように著作権者の許諾を得ることを前提とした行為は、通常著作権者の利益を不当に害するとは考えにくいのですが、著作権侵害に問われる可能性がありました。
そのため、著作権者の許諾を得て,又は裁定を受けて著作物を利用しようとする者は、これらの利用についての検討の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、当該著作物を利用することが侵害行為に当たらないことを明確にするために作られたのがこの第30条の3の規定なのです。
この規定の適用を受けるには、適法に著作物を利用しようとするものであれば足り、最終的に利用にまで至る必要はありませんので、仮に企画がボツになったような場合でも本条の適用が受けられ、適法ということになります。
本条の但書には「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は本条の適用が受けられないことが規定されています。以下は文化庁のサイトで本条の適用が受けられない事例として挙げられているものです。
○ 企業内において,業務の参考とするために新聞や書籍,雑誌等の著作物を複製する場合(公益社団法人日本複製権センターと契約を結んでいる場合には,その契約の範囲内で新聞等を複製することができます。)
○ あるキャラクターの利用に係る検討を行う過程で,当該キャラクターを利用した試作品を,社外の者に幅広く頒布する場合(文化庁:いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について(解説資料))
要するに本条においてもやはり利用の程度の問題となってくるわけです。