著作権の「二次的著作物とは」をテーマに、著作権専門の弁護士がわかりやすく解説します。著作権法に関することはなかなか理解しにくいため、トラブルなどが起きたときやトラブルを未然に防ぐためには著作権の専門の弁護士にご相談ください。
二次的著作物に関する条文
二次的著作物については、著作権法2条1項11号で「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう」と定義づけられています。
また著作権法11条に「二次的著作物」の条文があり、条文は以下のとおりになっております。
(二次的著作物)
第11条 二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
11条は条文を読んだだけでは内容が分かりにくいかもしれませんが、二次的著作物は原著作物とは独立した別個の著作物であるので、二次的著作物が著作権法で保護されるとしても、それによって原著作物の著作者の権利が何らかの影響を受けるようなことはありませんということを言っています。
二次的著作物については元となる著作物があるわけですが、この元の著作物のことを「原著作物」といい、原著作物の著作者を「原著作者」といいます。
例えば、小説を映画化した場合は小説が原著作物で映画が二次的著作物となり、漫画をアニメ化した場合は漫画が原著作物で、アニメが二次的著作物ということになります。最近の例でいうと、漫画やアニメのキャラのファンアートがよくSNSなどにあげられていますが、ファンアートも二次的著作物ということになります。
二次的著作物の成立要件
著作権法上は、二次的著作物の著作権者に著作権を付与するのにあたり、原著作権者に許諾を得て著作物を創作することを要件としていません。
例えば、原著作者Aの原著作物aをもとに、二次的著作物の創作者BがAに無許諾で二次的著作物bを創作したとしてもBに著作権は付与されます。しかしながら、Aに無許諾で二次的著作物bを創作した場合、Bの行為は翻案権侵害に該当するので、Bは原則として著作物を利用することができません。
ただし、ファンアートに関しては、ファンの皆さんが作品を愛したり、応援したりするつもりで描かれている場合も多いので、著作権者は黙認している場合も多いようです。また、作品によっては、ファンアートをする際には「#〇〇〇〇」を付けてくださいなどと細かなルールなどを決めて許可している例もあるので、ファンアートをネットなどに投稿する際には、作品の公式サイトなどをチェックしてルールを確認するのが良いでしょう。
なお、AともBとも無関係な第三者Cが二次的著作物bをBに無断で利用した場合は、Cに対しては単独で権利行使が可能です。
二次的著作物として成立するには、原著作物に新たな創作的要素が付加されていることが必要で、単なる模写や付加された要素がありふれた表現に過ぎない場合は、二次的著作物ではありません。また、元の著作物の本質的な特徴を直接感得することのできないほどに変更してしまった場合は、もはや別個の著作物なので二次的著作物とは言えません。
この点、最高裁の江差追分事件で、言語の著作物の翻案とは「既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう」と判断されています。