
この記事のポイント(3行まとめ)
- 著作権・出版権・著作隣接権の侵害は10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金(併科あり)。2025年の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に改められた
- 違法にアップロードされた著作物と知りながらダウンロードする行為は、音楽・映像だけでなく漫画・書籍など全著作物が対象(2021年〜)。ただし軽微なものや二次創作は除かれ、継続的・反復的に行った場合に限る
- 著作権侵害は原則として親告罪だが、海賊版を原作のまま販売・配信して権利者の利益を不当に害する行為は、2018年以降、告訴がなくても起訴できる
著作権侵害には、民事上の責任(差止め・損害賠償)だけでなく、刑事罰があります。その中心となる規定が著作権法119条です。この記事では、119条の各項が何を処罰しているのかを現行条文にそって整理し、あわせて2018年から2025年にかけての改正で何が変わったのかを、著作権を専門とする弁護士が解説します。
119条1項 — 著作権・出版権・著作隣接権の侵害
著作権法119条1項は、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者について、「十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定めています。
かつては「懲役」と規定されていましたが、懲役と禁錮を一本化する刑法改正(2025年6月1日施行)にともない、著作権法の罰則も「拘禁刑」に改められました。刑の重さ(上限10年)に変わりはありません。
なお、私的使用目的で自ら複製した者など、1項の適用から除かれる行為類型が括弧書きで定められています(そのうち一定のものは3項で別に処罰されます)。
119条2項 — 人格権侵害・海賊版の頒布・リーチサイト運営など
2項は、次に該当する者を「五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」としています。
- 著作者人格権または実演家人格権を侵害した者(1号)
- 営利を目的として、自動複製機器(30条1項1号)を著作権侵害となる複製に使用させた者(2号)
- 侵害品の頒布目的での輸入、情を知った上での頒布・頒布目的の所持など、113条1項により侵害とみなされる行為を行った者(3号)
- 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等(いわゆるリーチサイト)を公衆に提示した者(4号)
- 侵害著作物等利用容易化プログラム(いわゆるリーチアプリ)を公衆に提供等した者(5号)
- 海賊版のプログラムと知りながら業務上使用するなど、113条5項により侵害とみなされる行為を行った者(6号)
4号・5号は、海賊版サイトへのリンクを集めた「リーチサイト」やアプリの運営者を処罰するために、2020年の改正で新設されました(2020年10月1日施行)。
119条3項 — 違法ダウンロード(私的使用目的でも処罰される場合)
私的使用のための複製は原則として適法ですが(30条1項)、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードする行為は、一定の要件のもとで「二年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。対象は次の2つです。
1号:音楽・映像(録音・録画)
有償で提供・提示されている音楽や映像(条文上は「録音録画有償著作物等」)について、著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音・録画を、違法なものと知りながら行った場合です。2012年の改正で刑事罰化された、いわゆる「違法ダウンロードの刑事罰化」の対象です。
2号:漫画・書籍・論文など、録音・録画以外の著作物(2021年1月1日〜)
2020年の改正で、対象が音楽・映像以外のすべての著作物(漫画・書籍・論文・写真・イラスト・ソフトウェア等)に広がりました。ただし、国民の情報収集を萎縮させないよう、次の限定が付いています。
- 「軽微なもの」は対象外:数十ページの漫画の1コマ〜数コマ、長文の中の数行など、複製される部分の割合や表示の精度に照らして軽微なものは処罰されない
- 二次創作・パロディは対象外:翻訳以外の方法で創作された二次的著作物に係る権利(28条)は除かれている
- 継続的または反復して行った者に限る:1回限りのダウンロードは対象外
- 著作物の種類・用途やダウンロードの態様に照らして著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合は除かれる
- 違法なものだと知りながら行った場合に限られ、重大な過失で知らなかった場合を含めて解釈してはならないと明記されている(119条5項)
視聴するだけ・閲覧するだけは対象外
3項が処罰するのは「デジタル方式の録音・録画」「デジタル方式の複製」を行った場合です。違法にアップロードされた音楽や動画をストリーミングで視聴するだけ、漫画や記事をブラウザで閲覧するだけであれば、複製にあたらず、3項の対象にはなりません。
親告罪と非親告罪 — 123条
原則:告訴がなければ起訴できない(親告罪)
著作権法123条1項は、119条1項から3項までの罪などについて、「告訴がなければ公訴を提起することができない」と定めています。著作権侵害の刑事事件は、権利者が告訴して初めて起訴される、というのが原則です。
例外:海賊版の販売・配信は告訴がなくても起訴できる(2018年12月30日〜)
ただし、2018年の改正(TPP11整備法)で123条2項が新設され、次の要件をすべて満たす119条1項の罪は非親告罪となりました。
- 行為の対価として財産上の利益を受ける目的、または有償著作物等の提供・提示によって権利者が得ることが見込まれる利益を害する目的があること
- 有償で提供・提示されている著作物等(有償著作物等)について、原作のまま複製した複製物を公衆に譲渡・公衆送信すること、またはそのために複製すること
- 権利者が得ることが見込まれる利益が不当に害される場合であること
典型的には、市販の漫画・音楽・映像をそのまま複製して販売したり、インターネットで配信したりする海賊版行為が対象です。一方、「原作のまま」でない二次創作(同人誌・パロディ等)は、この要件を満たさないため、引き続き親告罪です。
法人への罰則(124条)
法人の代表者や従業員が、その法人の業務に関して著作権侵害等を行った場合、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑が科されます(両罰規定)。119条1項の罪については、法人に対して3億円以下の罰金です。
まとめ — 2018年以降の改正で変わった点
- 2018年12月30日:海賊版の販売・配信等の一部を非親告罪化(123条2項)
- 2020年10月1日:リーチサイト・リーチアプリの運営を処罰(119条2項4号・5号)
- 2021年1月1日:違法ダウンロードの刑事罰の対象を音楽・映像以外の全著作物に拡大(119条3項2号)
- 2025年6月1日:「懲役」から「拘禁刑」へ(刑法改正)
著作権侵害で告訴を検討している方、あるいは告訴・捜査の対象になり得るのではないかと不安な方は、行為が上記のどの類型にあたるのか、親告罪か非親告罪かによって対応が変わります。当事務所では、権利者側の刑事告訴と、投稿者・利用者側のご相談の双方に対応しています。
お問い合わせはこちらから|虎ノ門法律特許事務所
著作権・知的財産のトラブルでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
初回のご相談では、事案の概要をお伺いし、今後の見通しと対応方針をご説明いたします。
ご来所・ウェブ面談を中心に、電話・メールでの法律相談にも対応しています。LINEでのご予約・ご相談も可能です。
電話受付:03-6205-7455(平日9:00〜21:00・土日祝9:00〜18:00)










