
【この記事の3行まとめ】
- リンクを貼る行為は、それ自体では著作物の送信ではないため、公衆送信権の直接侵害にはあたらないというのが伝統的な理解です(ロケットニュース24事件参照)
- しかし令和2年著作権法改正で「リーチサイト規制」が導入され、海賊版コンテンツへのリンク提供は民事上のみなし侵害(113条2項)+刑事罰(120条の2第3号:3年以下)、リーチサイト運営はさらに重い刑事罰(119条2項4号:5年以下)の対象になりました
- 海賊版サイト「はるか夢の址」事件では、改正前の法制下でも運営者3名に実刑を含む有罪判決(懲役3年6月など)が言い渡されています。「リンクだから安全」という時代は終わっています
はじめに――「リンクを貼っただけ」は無罪か
「違法アップロードは犯罪だけど、リンクを貼るだけなら合法でしょ?」――かつて海賊版の世界で広く信じられていた理屈です。漫画やアニメの海賊版ファイルへのリンクを集めた「リーチサイト」(leech=ヒルに由来するとも、reach=到達させるとも言われます)は、自らのサーバーに違法ファイルを置かないことで、法規制の間隙を突いてきました。
しかし現在、この理屈は通用しません。令和2年(2020年)著作権法改正により、リーチサイトを規制する明文の規定が設けられ、リンク提供行為そのものが民事・刑事の両面で違法とされたからです。それ以前にも、大手リーチサイト「はるか夢の址」の運営者らには実刑判決が言い渡されています。
この記事では、①リンクと著作権の基本的な関係、②重要判例(ロケットニュース24事件・はるか夢の址事件)、③令和2年改正によるリーチサイト規制のしくみ、④SNS利用者・サイト運営者・権利者それぞれの実務ポイント、をわかりやすく解説します。
前提知識――リンクは「送信」ではない
ウェブページにリンクを貼っても、著作物のデータはリンク先のサーバーから閲覧者に送信されます。リンクを貼った人は送信の主体ではないため、リンク設定行為自体は自動公衆送信・送信可能化(23条)にあたらず、公衆送信権の直接侵害にはならないというのが伝統的な理解です(谷川和幸「漫画海賊版サイト『はるか夢の址』刑事事件」福岡大学法学論叢64巻2号568頁参照)。
この点を民事事件で扱ったのがロケットニュース24事件(大阪地判平成25年6月20日・平成23年(ワ)第15245号、判時2218号112頁・判決文PDF・裁判所ウェブサイト)です。ニュースサイトの記事に動画共有サイト上の動画へのリンクを貼った行為について、裁判所は送信の主体はあくまで動画をアップロードした者であるとして、リンク設定者の著作権(公衆送信権)侵害を否定しました。
もっとも、「直接侵害にならない」ことは「常に適法」を意味しません。①違法アップロード行為に加担していれば共犯(共同正犯・幇助)が成立し得ますし、②令和2年改正後はリーチサイト規制の網がかかります。以下、順に見ていきます。
はるか夢の址事件――リーチサイト運営者への実刑判決
事案の概要
「はるか夢の址」は、漫画などの海賊版ファイルへのリンクを大量に集めた国内最大級のリーチサイトでした。運営者らは、投稿者らがストレージサイトにアップロードした海賊版ファイルのURLをサイト上に整理・掲載し、広告収入を得ていました。
大阪地裁は平成31年1月17日、運営・管理者3名に対し、それぞれ懲役3年6月、懲役3年、懲役2年4月の実刑判決を言い渡しました(大阪地判平成31年1月17日・平成29年(わ)第4356号ほか・判決文PDF・裁判所ウェブサイト)。
法律構成――処罰されたのは「アップロードの共同正犯」
注目すべきは法律構成です。当時はまだリーチサイト規制の明文がなかったため、裁判所は、運営者らが投稿者らと共謀のうえ海賊版ファイルをアップロード(送信可能化)して公衆送信権を侵害したという共謀共同正犯の構成で処罰しました。処罰対象はリーチサイトの運営行為そのものではなく、アップロードによる公衆送信権侵害です(桑野雄一郎「送信可能化行為が反復継続して行われた場合の罪数」ジュリスト1534号8〜9頁参照)。
本件では、サイト上のランク制度や投稿の勧奨など、運営者と投稿者の結びつき(共謀)を基礎づける具体的な仕組みがあったため、この構成が可能でした。裏を返せば、アップローダーとの共同関係が薄い「純粋な」リーチサイトには共犯構成が届きにくいという課題が残り、これが令和2年改正による立法の直接の動機になりました(谷川・前掲606頁参照)。
参考――児童ポルノのURL掲載を「公然陳列」とした裁判例と最高裁決定
著作権以外の分野では、第三者が児童ポルノを掲載したウェブページのURLを一部改変したうえで自らのウェブページに掲載した行為について、児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めた原判決を是認した最高裁決定があります(最決平成24年7月9日・判時2166号140頁)。もっとも、この決定は、上告趣意が刑訴法405条の上告理由に当たらないとして上告を棄却したもので、法廷意見は「公然と陳列した」の解釈について実体判断を示していません(URLの掲載は「公然と陳列した」に当たらないとする大橋正春裁判官の反対意見が付されています)。URLの提供行為が、①新たな法益侵害の危険を生じさせ、②自ら掲載したのと同視できる態様で行われる場合には、リンク(URL)の提供でも正犯になり得る――という考え方は、リンクをめぐる刑事責任を考えるうえで重要な参照点です(深町晋也「インターネットにおけるリンク設定行為の刑法的課題」法律時報91巻6号66頁参照)。

令和2年改正――リーチサイト規制のしくみ
令和2年改正(2020年10月1日施行)は、リーチサイト対策として次の3段構えの規制を導入しました。
(1)リンク提供のみなし侵害(113条2項)――民事
違法にアップロードされた著作物等(侵害著作物等)へのリンク情報(送信元識別符号等)を提供する行為は、次の要件を満たすと著作権等を侵害する行為とみなされます。
- 提供の場が「リーチサイト・リーチアプリ」にあたること。具体的には、①違法コンテンツの利用を促す文言・強調などにより公衆を殊更に誘導するサイト等(誘導型)、または②掲載リンクの数・割合・分類などから主として違法コンテンツの利用のために用いられるサイト等(主目的型)
- リンク先が違法アップロードされたものであることを知っていたか、知ることができたと認めるに足りる相当の理由があること
みなし侵害が成立すると、権利者は差止請求・損害賠償請求が可能になります。
(2)リーチサイト運営者のみなし侵害(113条3項)――民事
リーチサイト・リーチアプリの運営者・提供者は、第三者が掲載した違法リンクについても、侵害を知り、または知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるのに、削除等の防止措置を講じないで放置すると、みなし侵害の責任を負います。
(3)刑事罰
- リーチサイト運営罪・リーチアプリ提供罪(119条2項4号・5号):リーチサイトを公衆に提示(運営)し、またはリーチアプリを公衆に提供した者は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(併科あり)
- リンク提供罪(120条の2第3号):113条2項のみなし侵害行為(リンク提供)を行った者は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(併科あり)
なお、同じ令和2年改正では、違法アップロードされたコンテンツと知りながらダウンロードする行為の規制も音楽・映像以外の著作物(漫画・書籍・論文など)に拡大されています(119条3項参照)。

実務への影響――立場別のポイント
SNS利用者・ブログ運営者
- 公式サイト・公式動画への通常のリンクは従来どおり自由です。リーチサイト規制の対象は「誘導型」「主目的型」のサイト等における違法コンテンツへのリンク提供です
- ただし、海賊版と知りながらSNSやブログで違法アップロード先のURLを紹介・拡散する行為は、態様によっては幇助やみなし侵害の問題を生じ得ます。出所の怪しいコンテンツへのリンクは貼らないのが鉄則です
まとめサイト・アプリの運営者
- 「自分のサーバーには違法ファイルを置いていない」という抗弁はもはや通用しません。サイトの構成・文言・リンクの集積状況から「誘導型」「主目的型」と評価されれば、運営行為自体が犯罪(5年以下)になります
- 一般の掲示板・SNSなど正当なプラットフォームは原則として対象外ですが、違法リンクの削除要請を正当な理由なく放置し続けるような特別な事情があれば、責任を問われる余地があります。通報窓口と削除フローの整備が重要です
権利者(出版社・クリエイター)
- 改正により、リーチサイト運営者・リンク投稿者に対する差止め・損害賠償の法的根拠が明確になりました。発信者情報開示請求と組み合わせた民事責任追及、警察への刑事告訴という選択肢があります
- はるか夢の址事件では、刑事とは別に出版社による損害賠償請求訴訟も提起されており、刑事・民事の両面からの対応が現実的な選択肢になっています
よくある質問(FAQ)
Q1. 公式のYouTube動画をブログに埋め込むのは違法ですか?
A. 権利者自身が公開している適法なコンテンツへのリンク・埋め込みは、リーチサイト規制の対象ではなく、原則として適法です。規制対象は「侵害著作物等」(違法アップロードされたコンテンツ)へのリンク提供です。
Q2. リンク先が違法アップロードだと知らずに貼ってしまったら犯罪になりますか?
A. みなし侵害・刑事罰の成立には、違法アップロードであることを知っていたか、知ることができたと認めるに足りる相当の理由があることが必要です。知らずに貼った通常のリンクが直ちに犯罪になるわけではありません。ただし、権利者から指摘を受けたら速やかに削除すべきですし、明らかに怪しいサイトへのリンクは「知ることができた」と評価されるリスクがあります。
Q3. 自分のサイトに違法ファイルは一切置いていません。それでも捕まるのですか?
A. はい。令和2年改正後は、違法ファイルを自ら保管していなくても、リーチサイトの運営(119条2項4号)やリンク提供(120条の2第3号)自体が処罰対象です。改正前の事案でも、はるか夢の址事件のようにアップローダーとの共謀を理由に実刑となった例があります。
Q4. 海賊版サイトを「見るだけ」「ダウンロードするだけ」はどうなりますか?
A. ストリーミングで視聴する行為自体への罰則はありませんが、違法アップロードと知りながらダウンロード(複製)する行為は、令和2年改正により漫画・書籍等を含めて違法化され、正規版が有償で提供されている著作物を継続的・反復的にダウンロードすると刑事罰の対象になり得ます(119条3項)。
Q5. 自社コンテンツがリーチサイトに掲載されています。何ができますか?
A. ①サイト運営者・リンク投稿者へのリンク削除請求(113条2項・3項のみなし侵害に基づく差止請求)、②損害賠償請求、③発信者情報開示請求による投稿者・運営者の特定、④警察への刑事告訴、が考えられます。海外サーバー経由のサイトも多く、手続の選択と順序が重要ですので、早めに弁護士にご相談ください。
まとめ
- リンク設定は著作物の送信ではないため公衆送信権の直接侵害にならないのが出発点(ロケットニュース24事件)
- しかし、アップローダーと共謀すれば共同正犯として実刑もあり得る(はるか夢の址事件・大阪地判平成31年1月17日)
- 令和2年改正により、リーチサイトでのリンク提供はみなし侵害+3年以下の刑事罰、リーチサイト運営は5年以下の刑事罰の対象となり、「リンクだから合法」という抜け道は塞がれた
- 一般ユーザーは出所不明のコンテンツへのリンク拡散を避け、サイト運営者は削除体制を整備し、権利者は民事・刑事の両面から対応を検討する
リーチサイトをめぐる法規制は、この10年で最も大きく動いた著作権分野のひとつです。被害を受けている権利者の方も、自社サービスの適法性に不安のある事業者の方も、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
出典・参考文献
- 大阪地判平成31年1月17日・平成29年(わ)第4356号ほか〔はるか夢の址事件〕・判決文PDF・裁判所ウェブサイト
- 大阪地判平成25年6月20日・平成23年(ワ)第15245号(判時2218号112頁)〔ロケットニュース24事件〕・判決文PDF・裁判所ウェブサイト
- 最決平成24年7月9日(判時2166号140頁)〔児童ポルノURL改変事件〕
- 深町晋也「インターネットにおけるリンク設定行為の刑法的課題――特にリーチサイト規制をめぐる解釈論的・立法論的検討を通じて」法律時報91巻6号64頁以下(2019年)
- 谷川和幸「漫画海賊版サイト『はるか夢の址』刑事事件」福岡大学法学論叢64巻2号567頁以下(2019年)
- 桑野雄一郎「送信可能化行為が反復継続して行われた場合の罪数」ジュリスト1534号8〜9頁(2019年)
- 西口博之「海賊版リーチサイトと法規制――最近の裁判例に関連して――」知財ぷりずむVol.17 No.204・19頁以下(2019年)
- 著作権法23条、113条2項・3項、119条、120条の2(条文はe-Gov法令検索の現行法で照合)
免責事項
本記事は、裁判所ウェブサイトで公開されている判決情報および一般的な法律情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。実際の対応にあたっては、必ず弁護士にご相談ください。
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