美術の著作物 「紋次郎いか」控訴審判決を読む――キャラクターの“デフォルメ”が翻案権侵害とされた理由と著作権法28条の射程(知財高判令和7年9月24日) 2026年7月20日 時代小説『木枯し紋次郎』の主人公をかたどった図柄を、半世紀にわたり駄菓子「紋次郎いか」の容器に使い続けてきた――。この図柄をめぐる著作権侵害訴訟で、知的財産高等裁判所は令和7年(2025年)9月24日、請求を棄却した一審判決を覆し、メーカーに約5,600万円の支払いと商品の製造販売の差止めを命じました。 「キャラクター... 大熊 裕司
著作物性 最高裁判決意匠法デザイナー知財 「TRIPP TRAPP」最高裁判決──量産実用品の著作物性に最高裁が初めて明確な基準を示した意義 2026年5月12日 ノルウェー発の子ども用椅子「TRIPP TRAPP(トリップ・トラップ)」は、長年にわたり高いデザイン性をもつ製品として知られてきました。本件で争われたのは、この椅子の形状そのものが著作権法上の「著作物」に当たるのか、そして競合製品の製造販売が著作権侵害や不正競争に当たるのか、という点です。量産され、日常生活の中で実用... 大熊 裕司
建築の著作物 設計図建築マンション マンションの設計図は著作物か──メゾンA事件に見る「建築の著作物」と「図面の著作物」の交錯 2026年4月19日 1. 「設計図を真似された」と訴えるとき、何が問題になるのか あるマンションを設計した建築士が、自分の図面を他社に流用されたと考えたとき、まず頭に浮かぶのは「著作権侵害で損害賠償を請求できないか」という発想でしょう。 ところが、この発想はすぐに二つの壁に突き当たります。第一に、建築物そのものを「建築の著作物」として保護... 大熊 裕司
建築の著作物 建築建売住宅住宅デザイン 建売住宅は「建築の著作物」か――グルニエ・ダイン事件が引いた著作物性の高いハードル 2026年4月19日 はじめに――「このマイホーム、著作物として守れますか?」 住宅メーカーの法務担当者から、こんな相談が持ち込まれることがあります。 「競合他社が、うちの看板商品の外観デザインにそっくりな住宅を展示場に建てた。意匠権はとっていない。でも、グッドデザイン賞も受賞した当社自慢の住宅だ。著作権法で差し止められないだろうか?」 直... 大熊 裕司
著作物性 プログラムソースコード電車線設計 電車線設計用プログラム事件――ソースコードの「ありふれた表現」はどこまで保護されないのか 2026年4月19日 東京地判平成15年1月31日・平成13年(ワ)第17306号(著作権侵害差止等請求事件・判時1820号127頁) 判決文(裁判所ウェブサイト) 1. はじめに――「同業他社のCADマクロが自社製品とそっくり」は著作権で止められるか SI・CADベンダーの実務家であれば、一度は次のような相談を受けたことがあるのではないで... 大熊 裕司
著作物性 データベース不法行為翼システム 「翼システム事件」──データベースに著作物性は認められるか、そして著作権がなくても不法行為で保護される場面とは(東京地判平成13年5月25日中間判決) 2026年4月20日 1. はじめに ある企業が、多大な費用と労力を投じて、自動車の車種・型式・諸元をまとめた業界向けデータベースを構築しました。ところが、ライバル企業がそのデータをほぼそのままコピーして、より安い価格で販売し始めてしまいました。著作権法は、このような「情報の塊」を保護してくれるのでしょうか。 著作権法は平成元年(1986年... 大熊 裕司
写真の著作物 共同著作者写真ヘアスタイル 「ヘアスタイルコンテスト写真事件」──被写体をスタイリングした美容師は写真の共同著作者となるか(東京地判平成27年12月9日) 2026年4月24日 1. はじめに プロのカメラマンが、ヘアドレッサーのスタイリングしたモデルを撮影します。そこにはモデル、スタイリスト、カメラマン、そして撮影を依頼した出版社と、複数のクリエイティブが関わっています。では、その一枚の写真の「著作者」は誰なのか。髪を作り込んだヘアドレッサーは共同著作者として権利を主張できるのか。そして、コ... 大熊 裕司
美術の著作物 応用美術家具TRIPP TRAPP 【詳細解説】TRIPP TRAPP事件―子ども用椅子のデザインは著作物か?応用美術の保護範囲を大きく広げた知財高裁判決 2026年4月19日 1. はじめに―「実用品のデザイン」に著作権は及ぶのか? 家具、文具、アクセサリー、家電製品。私たちの身の回りには、デザイン性の高い実用品が数多くあります。それらの形状や模様が他社に模倣されたとき、デザインした側はどの法律で守られるのでしょうか。 真っ先に思い浮かぶのは「意匠法」ですが、意匠権は特許庁への登録が必要であ... 大熊 裕司
地図、図形の著作物 住宅地図損害論ゼンリン 地図のコピーは著作権侵害?ゼンリン住宅地図事件(賠償約2億円)をわかりやすく解説 2026年7月20日 【この記事の3行まとめ】 住宅地図をコピーして業務に使っていたポスティング会社に、裁判所は約2億1296万円の損害賠償責任を認めました(請求は一部請求3000万円のため認容はその範囲) 地図は「事実を写しただけ」に見えても、情報の取捨選択・表示方法・検索の工夫に個性が表れていれば著作物として保護されます 損害額は1頁あ... 大熊 裕司
美術の著作物 応用美術設計図 応用美術と設計図の著作物性――スモーキングスタンド事件(東京地判平成9年4月25日)をTRIPP TRAPP最高裁判決から読み直す 2026年6月7日 1 はじめに 工業製品のデザインは、どこまで著作権法によって保護されるのでしょうか。椅子、テーブル、灰皿スタンド、文房具――いずれも機能性と美しさを兼ね備えた「応用美術(applied art)」と呼ばれる領域ですが、わが国の著作権法はこの領域について明文の規定を置いていません。そのため、工業製品のデザインが著作物にあ... 大熊 裕司